人との繋がりが、進む道や可能性を切り拓いてくれる

伝導機器販売の商社としてスタートしたマシン小谷は、お取引先からの依頼に応えて自動製麺機を作ったのを契機に、自ら機器の設計・製作を行うメーカーとしての第一歩を踏み出しました。

商社として「お客様のニーズを深く理解し、豊富な知識により最適解をご提供する」という長年の取り組みは、もの作りにおいても変わることなく、現場の要望に潜む「課題」を発見し、その解決に最も適した「もの」を提供する上で、「無いものは作ればよい」という自然な流れであったと考えることができます。

2000年代初頭、お客様が直面する最優先課題は多様化への対応と作業の標準化でした。コンビニエンスストアの隆盛が、全国規模で均質な商品を多量に生産するベンダー工場の組織化と、独自の新商品を絶え間なく店頭に登場させる潮流を生み出したのもその要因と言えるでしょう。麺類という商品ジャンルに限っても、次々と新しいサイズ、パッケージングが考案されていき、製麺の工程は同じでも、その先の容器封入などの工程は商品の特性によって異なるため機械に頼れず、手作業で行うという一種の逆行が起こっていました。

私が社長に就任して間もなく、そうした現場で多様な容器に対応し自動供給する装置を作れないかという打診がありました。社内には「他の大きなメーカーでも作れていないものをウチで作れるはずがない」という声もありましたが、商社の業務で得た機械や部品に関する知識を総動員し、頭の中で組み立てシミュレーションを行ったうえで、私にはそれが可能であると思えたのです。

中心的な社業とは別プロジェクトとして、設計や加工に外注の協力を仰ぎながら1年ほどかけて試作機を完成させました。できあがった容器供給機は納品先に好評をもって迎えられ、同チェーンの複数の工場に改良された量産機を納めることになったのです。

全国に製造・販売網を拡げるコンビニ業界には「ひとつの工場が抱える悩みは、全国のすべての工場の悩みである」という特性があり、広がりと繋がりが期待できるお得意様です。「広がりや繋がり」は、私たちマシン小谷がそれぞれの時代に迎えた成長や飛躍を後押しするキーワードでもありました。

商社が過当競争による利益率の低下に向かっていた時代に、メーカーへの第一歩を後押ししてくださったのもお得意様ですし、そのためのノウハウや設備も、ちょうど事業譲渡を考えていたお取引先メーカーから引き継ぐ形で当社にもたらされたものです。近年の容器供給機の開発にあたっても、苦心していたプログラミングを一気に解決方向に高めたのは、タイミング良く「独立したいので仕事相手を探している」と声をかけてきた元お得意先の電気部門の方でした。

人の繋がりは、非常に大切です。お取引先との長年の信頼構築や協働が、常に私たちのブレイクスルーを支えてきたということができます。

アイデアと実現力で「マシン小谷クオリティ」を磨き上げる

もの作りの歴史は、いわば人類の歴史です。ですから、作る側に求められるものも、その時々の世の中で何が求められ、どのような課題に直面しているかによって刻々と移り変わっていきます。

現在の社会、なかでも日本の製造業が直面している最大のテーマは、少子化や労働力不足に伴う「省人化」であると私は考えています。容器供給機の成功は、「マシン小谷は、このような細かいニーズに対応した装置を作ってくれるメーカーだ」という認識をお客様に広める一種の名刺代わりの役割を果たし、以来「もしこんなことが実現できる機械が作れるなら欲しい」という引き合いが増えました。その要望に共通しているのが、不安定な労働力を機械による自動作業に置き換えることで、人手不足を緩和し、パートタイマーなどの人件費を抑えられるという期待でした。

省人化とひとくちに言っても個々のニーズは細分化されていて、それに応える機械は、どうしてもワンオフに近い性質のものになります。しかし、コンビニ業界がそうであったように、ニッチと思われるニーズでもそれを共有するお客様の数は実は少なくないのです。

私たちは、すべてのニーズに対応しすべてのシェアを取っていくということを考えていません。他社が作らないもの、作ろうとしなかったものを具現化してお客様のニーズに応えるオンリーワンなもの作りで、まだまだ社業を成長させていくことができると私は考えています。

そのためにはアイデアが必要です。「これまでになかったもの」を創造するには、瞬発力あるもの作りを可能にするレスポンスや、難しい加工にも対応できる製作クオリティの向上も不可欠です。

現在取り組んでいる人材育成や設備投資を含めた製作の内製化は、マシン小谷の未来を左右する重要な取り組みです。これまでに当社が大切にしてきた人との繋がりや、実際の声からニーズを汲み上げる姿勢にいっそうの磨きをかけると共に、それら全てを設計図やパーツのように組み合わせることで、世の中に貢献する機械をご提供すること・・・「その実現力が私たちのクオリティです」と胸を張れる会社を目指していきたいと考えています。

代表取締役 小谷 悟史